【Podcast版 週末シネマノート】おじさん、リトル・ミス・サンシャインを語る
【週末シネマノート】リトル・ミス・サンシャイン回 今週の5曲
【家族という名のバスが走り出すロードームービー】

この作品のポスター、オシャレだと思いませんか?オシャレですよねー
アートワークが秀逸な作品には当たりが多いという自論に従い、ジャケ買いならぬジャケ借りでめぐりあった本作品。
作品を観終わった後、自分の直感は微塵も間違っていなかったと確信すると同時に、生きるということに対し、少しだけ肩の荷が軽くなったような気がしました。
ジャンル的にはコメディーの冠がつけられているものの、コメディ要素はあくまで本作の大事な大事な隠し味であり、純然たるヒューマンドラマ。
登場するのは、全員がどこか決定的に壊れているフーバー家の面々。
成功を盲信する父親、ヘロイン中毒の祖父、自殺未遂の伯父、沈黙を誓った兄。
まともな人間が一人もいない彼らが、一台のボロバスに乗り込んで走り出す。


家族とは?
生きるとは?
正しさとは?
彼らの旅の行く先は?
きっと観終わった後に何かしら自分なりの生きるということに対しての答えが出てくるでしょう。
【見えている世界】
人というものは自分の目で見えているもの、頭のなかで作り上げたものに対し何の疑念も抱かない。
私もそう。そして、本作に登場するフーバー家の面々もまたしかりである。
家族はまとまっていなければならない、人生、勝ち組でなければならない、ニーチェの言うことは絶対だ…
こうして文字にするとその滑稽さたるや。

それでもそれを否定することはできない。
何故なら自分たちも大差はなく、その狭い主観の中で必死にもがいているからだ。
そして当然、彼等も本気でそう思っており行動しているから。
そう、どうしても人は主観的にものを考えがちになり、数多の選択肢は鳴りを潜めてしまう。
リトル・ミス・サンシャイン コンテストで優勝を目指すオリーブ。
旅の道中に立ち寄ったダイナーでオリーブが注文したのはアイスクリーム。
コンテストに出る人間がアイスクリームを食べるなんて意識が低すぎる。とオリーブに語りかける意識高い系の父リチャード。
オリーブはアイスクリームを食べるのをやめてしまう。
さて、どうだろう。言っていることは至極まともではある。が、しかし相手は子供。その先は価値観の違いになるのだろうけれども…
フーバー家の父以外の面々は、子供は子供らしく、美味しくアイスクリームを食べな、と、オリーブを諭し、オリーブは子供らしく美味しくアイスクリームを食べました。

自分のことがまるで見えていない人間でも、周りの世界はちゃんと見えている。
そしてその世界は同じ世界なのである。
人というものは実に不思議な生き物だ。
【正解とはなにか?その先にあるもの】
各々に想いを抱え旅は続く。そして皆少しづつ見えてくる現実。
祖父のエドウィンはオーバードーズでオリーブの勇姿を見ることなく死亡。
父、リチャードのビジネスは頓挫。
息子のドウェーンは色弱が判明し夢だったパイロットへの道が絶たれる。
ここまで極端でなくても現実なんてものは、なかなか上手くいかない事が常である。
だからといってそれがだめなのかと言えば、世の中それほど世知辛くないというのもまた常であり、また新たなものがその先に見えてくる。
色弱が判明し空軍アカデミーへの進路が絶たれたドウェーン。絶望のあまり車内で暴れ出しバスを止め、ここで自分を降ろし一人にしてくれと言う。オリーヴの慰めでバスに戻り旅を続ける。

コンテスト会場に到着し、そこで母の兄フランクと話をする。
18歳まで何もしたくない。家族や学校から逃げ出したくなる。と、話すドウェーン。
苦しんだ日々こそ自分を形成した日々だと悟る。
幸せな日々は無駄に過ぎて何も学ばない。
とプルーストを引用し、若い頃の苦悩は何者にも代えがたい財産だと諭すフランク。
結果ドウェーンは
仕事も学校も空軍アカデミーも、このコンテスト同様クソだ!
飛びたければ自分で飛ぶ。もう好きなことしかやらない。
と、ニーチェでも誰でもない、自分の言葉で自分を見つけられた。
導き出した答えが正解ではない。自分の力で自分を捉えられた。
おそらくこれが正解なのだろう。そう、答えは決して1つではないのである。

【迷っても、歪でも走り出し、また走り続ける】
なんとか会場に潜り込んだフーバー家を待ち受けてたのは、完璧に仕上げてきた人形のような美少女ばかり。お腹の出たオリーブの場違い感は歴然である。
オリーヴが現実を見せつけられて傷つく前にやめさせようと諭す兄と父。
それでも母のシェリルはオリーヴの意思を尊重しステージへ送り出す。
意を決し大舞台に立ったオリーヴ。
披露したのはリック・ジェームスの『Super Freak』そして到底、この場には似つかわしくない最低で最高なファンキーなバーレスクダンス。
お上品な会場の空気を凍らせた。
ブーイングが飛び、審査員が激怒する中、客席からフーバー家の面々がステージへ飛び乗る。オリーヴを連れ戻すためでなく、彼女を守るために。
家族一緒になってメチャクチャに踊り狂うのだ。

結果、
フーバー家は今後このコンテストには出禁になる。

誰もWINNERにはなれなかったけど、会場を後にする一家の顔にはめまいがする程の清々しさが漂っていた。
自分のことすらままなっていなかったフーバー家の面々。
旅の道中で起こった出来事で、それぞれが少しづつ変わり、出発の頃は険悪だった車内の雰囲気も、帰りには笑顔に。

クラッチも壊れ、ドアも外れ、クラクションも鳴り止まず止まることすらままならない黄色のワーゲンバス。このポンコツなワーゲンバスこそフーバー家であり、不完全でも必死に生きている私たちそのものである。
必ずしも万端の状態でなくとも車は進む。
止まってしまってもまた動き出す。皆の力で。
道に迷ってもなんとか目的地にはたどり着ける。
家族とはまさに車。時には止まり、時には故障する。
いろいろなメカニックマンがいて様々なナビゲーターがいる。
力を合わせ修理し、導いていく。
目的地はどこ?この旅こそが人生そのものだ。
人生は迷っても、歪でも走り出し、また走り続ける。
みんなの力で

監督 ジョナサン・デイトン/ヴァレリー・ファリス
公開 2006年
上映 102分
リチャード・フーバー グレッグ・キニア
シェリル・フーバー トニ・コレット
フランク スティーブ・カレル
グランパ アラン・アーキン
ドウェーン・フーバー ポール・ダノ
オリーブ・フーバー アビゲイル・ブレスリン



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