転校生

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【転校生】ノスタルジーが教えてくれる変わるもの変わらないもの

誰もが通るであろう瑞々しくも不器用な青春時代。

この作品を観ると青春という普遍的なものを思い返すことが出来ると同時に今の私達が失ってしまった自由を感じることが出来るような気もする。

広島 尾道を舞台に坂道が魅力的で絵画のような街を背景に、身体が入れ替わってしまった一美と一夫が駆け抜ける青春ムービー。

この作品は恋に恋していたあの頃を思い出させると同時に正しさで少し窮屈になった今の私たちに”本当の大切なこと”を問いかけてくる。それは”今”というレンズを通すと、驚くほどおおらかで、そして少しだけ切ない。

尾道の風に吹かれながら、もう一度あの頃の二人に会いにいこう。

【今の僕ら、あの頃の僕ら 時代が映し出すもの】

おそらく本作品は現代においてNGであろう要素が山盛りだろう。

中でも物語のメインテーマでもあるジェンダーの扱いについては顕著だ。

今の私達から見れば本作品での性差の描き方は驚くくらいに大雑把だ。

例えば慣れない身体の扱いに四苦八苦する様や思春期特有の戸惑いを隠さない演出。

しかしそこで描かれているものは、現代の触らぬ神に祟りなし的な表面的な優しさではなく、身体が入れ替わった二人が”異性”を理解し受け入れようとする人間愛が描かれている。そこに茶化しやエロティックさなど皆無である。

昨今の正しさで守られた優しさも大切だが、魂の交流が息づくエンディングで発せられる二人のセリフが正当解のような気がする。

【モノクロームとセンチメンタルとノスタルジー】

本作品の特徴の一つが物語の入口と出口を彩るモノクロームの映像だ。

80年代初頭、バブル前夜で浮き足立った華やかさを世の中が求め始めていた中、こういった手法が観客に与えたインパクトは計り知れなかったであろう。

幼い頃から映画を愛した大林監督の映画へのオマージュであると同時に作品のテーマである「子供時代の終わり」というテーマを存分に表現するための必然だったのではないだろうか。

このモノクロの映像をさらに至高のものへと昇華させているのが、シューマンのトロイメライ(夢)主題は”子供の情景”。

映像の優しさとストーリの持つ不可思議さ、映し出される子供の情景という要素が、オープニングでは夢のような出来事の導入として、エンディングでは子供の情景との別れとして効果的に用いられセンチメンタルな旋律が効果的に響き渡る。それはまるで「遠い日の特別な記憶」として額縁に収められたような、かけがえのない質感となって胸に迫るのだ。

【それぞれのさよなら その先に見えるもの】

現在でも第一線で活躍する主演の二人。それほど演技経験の多くない当時の二人が見せたパフォーマンスはまさに圧巻一言。

尾道の美しい坂道や瓦屋根を背に、「女の子」になってしまった一夫の繊細さと、「男の子」として振る舞う一美の切なさは、単なる演技を超えた一瞬の輝き。

それを痛感するのもやはりオープニングとエンディング。そこで彼らが心底「ちゃんと入れ替わった」ことを痛感させるからだ

そして、そのエンディングはあまりにも有名である。

極力ネタバレを避けるためここで詳細は書かないが、二人が口にしたさよならの真意はどこにあるのだろうか?おそらく40年以上も前に現在叫ばれている”多様性”の答えの一部がここに出ているのであろう。

ラストの一美の挙動。はじめてこのシーンを見たわたしに去来した言葉にできなかった胸の内。それは大人への階段への最初の一歩だったのだと思う。

そして今、私はこの作品を観て、ただ純粋に少年だった頃を思い出すのだ。

【時は流れて】

本作は尾道3部作の第一作目として有名ですが、後に新尾道3部作があります。

その新尾道3部作の一つ”ふたり”のエンディングテーマで使用されている”草の想い”

この曲は作曲 久石譲 作詞 大林宣彦 フアンの間でも人気があり有名な曲ですが、 実はすでに転校生で使われており大林監督が歌唱されております。(一美が母と水着を買ったあとに入った喫茶店の有線で流れてます)(DVD化された時に権利関係で曲が差し替えられてる可能性もありますが)

大林宣彦バージョン、ふたり のサウンドトラックに収録されております。

podcast版 週末シネマノート ”転校生”

監督 大林宣彦

公開 1982年

上映 112分

出演 尾美としのり

   小林聡美

【あらすじ】

勉強よりもいたずらが大好きなガキ大将中学生・斎藤一夫のクラスに斎藤一美という幼なじみの女の子が転校してくるところから始まる。

ある日、一夫と一美は神社の石段を転げ落ち、これがもとで二人の身体が入れ替わってしまう。

おかげでガキ大将の一夫は女っぽくなるし、一美は荒っぽくなる。

本人たちはもちろん、両親や仲間たちまでも巻き込んで大騒動という傑作ユーモア思春期編。

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